ヤマガタダイカイギュウ(プクちゃん)
[ヤマガタダイカイギュウ]
ヤマガタダイカイギュウと大江町
昭和53年(1978年)8月、大江町用地区を流れる最上川で、左沢小学校の6年生が動物の化石を発見しました。
化石は最初、クジラのものだと考えられていました。しかし、岩の中から化石をきれいに掘り出す作業中、クジラにはない、すり減った歯が発見されました。その後、アメリカのハワード大学のドムニング博士の同定により、世界的に貴重な新種の海牛の化石であることが判明し、化石の動物は「ヤマガタダイカイギュウ」(和名)と命名されました。ヤマガタダイカイギュウは、マナティーやジュゴンと同じ「海牛目」に属する草食の哺乳動物です。18世紀中ごろまでベーリング海に生息していたステラーカイギュウの先祖にあたります。体長は3.8mほどで、1000万年前ころ、浅い海で昆布を食べながら暮らしていた温厚な動物だったと考えられています。
昭和60年、大江町はヤマガタダイカイギュウの復元模型を作成しました。
この模型は、「プクちゃん」という愛称で親しまれ、町のバス停や様々なグッズのモチーフとなっています。
(ヤマガタダイカイギュウリーフレットより
「ヤマガタダイカイギュウリーフレット(ウェブ版)」をダウンロードする(PDF:3.8MB))


ヤマガタダイカイギュウの発見と発掘
昭和53年の夏、雨が降らず水が減った最上川の川底で、左沢小学校の児童が骨の化石を発見しました。
みつかった化石は貴重なものであることが分かり、山形県立博物館による発掘が行われることになります。
8月30日、発掘の日は雷雨に見舞われ川が増水しますが、化石が水に浸かってしまう寸前に、1トンもある岩盤ごと無事に引き上げることに成功しました。
その後クリーニングやアメリカの専門家による同定を経て、この化石は新種のカイギュウのものであることがわかりました。
奇跡的なタイミングと関係者の努力によって「ヤマガタダイカイギュウ」は今によみがえり、大昔のロマンを私たちに伝えてくれます。
ヤマガタダイカイギュウが解き明かした進化
カイギュウの仲間はゾウと同じ先祖から進化し、今はジュゴンやマナティーが生き残っています。
ヤマガタダイカイギュウは、寒い海に適応して大きくなった「ヒドロダマリス亜科」というグループに属しています。
このグループは進化するにつれて歯や指がなくなる特徴があり、専門家は「進化途中の小さな歯や指を持つ化石が見つかるはず」と考えていました。
ヤマガタダイカイギュウの化石はこの特徴を備えており、化石の発見は、進化の謎を解く「ミッシング・リンク(失われた環)」を埋める世界的にも貴重なものでした。
なお、このグループの最後の子孫は「ステラーカイギュウ」で、18世紀に絶滅しています。
ヤマガタダイカイギュウの進化系統図
(山形県立博物館 瀬戸大暉氏・長澤一雄氏)

ヤマガタダイカイギュウの生きた時代
ヤマガタダイカイギュウの化石は、約1000万年前より少し古い時代の地層(本郷層 橋上砂岩部層)からみつかりました。
地質年代でみると、ヤマガタダイカイギュウは約6500万年前に絶滅した恐竜よりもあと、約50万年前に現生人類の祖先が分かれたよりも前の時代(新生代第三紀後期中新世)に生きていました。

ヤマガタダイカイギュウのくらしと環境
ヤマガタダイカイギュウがみつかった地層からはホタテの仲間の化石がみつかっています。
このことから今の山形の盆地周辺は、入り江が広がる涼しく浅い海だったと考えられています。
当時、太平洋側と日本海側は海峡でつながっていて、火山活動のなかで徐々に現在の地形がつくられていきました。
ヤマガタダイカイギュウの化石が発見された場所の近くでは、巨大ザメ「オトドゥス・メガロドン」の歯の化石も見つかっています。
当時の海ではクジラやカイギュウがサメに襲われることがあったかもしれません。
ヤマガタダイカイギュウが住んでいた海のイメージ図
(鈴木雅宏氏(1986)小林昭二氏(2006)資料と山形県立博物館指導のもと作成)

ヤマガタダイカイギュウに会いに行こう!
ヤマガタダイカイギュウの復元模型や全身骨格レプリカは次の場所で展示中です。
発掘調査場所とあわせて、ぜひご覧ください!

詳しく知りたい人へ(リーフレットと参考文献)
「ヤマガタダイカイギュウリーフレット(ウェブ版)」をダウンロードする(PDF:3.8MB)(大江町教育委員会/2024年、協力:山形県立博物館)- 「1ヤマガタダイカイギュウ」『ふるさと発見大江』(大江町教育委員会/2020年)
- 『ヤマガタダイカイギュウ発掘調査報告書』(高橋静夫ほか/1983年/山形県立博物館発行)
- 『ヤマガタダイカイギュウ』(高橋静夫、鈴木雅宏/1986年/山形県立博物館発行)
- 『特別展 大海牛・大鯨展-海で進化する哺乳類-』(長澤一雄/2000年/山形県立博物館発行)
- 「博物館の50年と幸運の化石」『山形県立博物館50年の歩み』(長澤一雄/2022年/山形県立博物館発行)
- 『ダイカイギュウの運動と摂食機能の進化-ヒドロダマリス亜科(カイギュウ目:ジュゴン科)における機能形態学的研究ー』(小林昭二/2006年)
- 日本地質学会ホームページ(地質年表)

